9月5日に、令和8年度の理論政策更新研修を開催しました。
会場出席91名、オンライン出席80名の計171名が受講し、県の経済情勢の解説と経営者3名による事例発表が行われました。
日時:令和8年9月5日(土) 8:20~13:00
会場:福井商工会議所ビル 地下 コンベンションホール
講師:
福井県産業労働部 副部長 長谷川慎司 氏
株式会社農園たや 代表取締役 田谷徹 氏
株式会社清風荘 取締役 伊藤将太 氏
株式会社HAQTSUYA 代表取締役 小川尚樹 氏
第1部「福井県の経済情勢および新たな経済プラン(仮称)について」(福井県産業労働部 副部長 長谷川慎司 氏)
仕事に関する県民の幸福実感は向上した一方、企業収益や世帯収入は全国順位では横ばいであると紹介。有効求人倍率は1.69と全国1位が続く人手不足地域であり、専門職・現場人材は不足、事務職は余剰という需給のミスマッチが起きていると説明されました。
中小企業には人への投資と生産性向上が求められるため、賃上げの原資確保に向けた適正な価格転嫁が必要と指摘。また、8月に県内経営者76人が参画する「ふくいAXコンソーシアム」を設立したことに触れ、松尾研究所と連携し、研修だけでなくモデルケースの創出も目指すと発表されました。

第2部 事例研究1「外国人材の受入と農作業の生産性向上」(株式会社農園たや 代表取締役 田谷徹 氏)
青年海外協力隊でインドネシアに派遣され、現地の大学院にも留学した経験を活かし、インドネシア人技能実習生の受け入れを開始。外国人との協働では「出来ない」という偏見を取り除くことが重要と強調されました。
課題解決のため、仕事で使う用語の統一、作業内容の簡素化、資材・道具の整理整頓を実施。資格試験をサポートして普通免許の取得を支援し、実習生1名での作業を可能にしました。さらに、スマホの貸与によるLINEでの業務連絡や、自社開発アプリでの作業予定・作業報告・日報の管理を導入。42棟あるハウスの状況を作業順にまとめたことで、農場長の指示を待たずに各自が判断して次の作業へ進めるようになったとのことです。
また、休日に日本を楽しめるよう作業車を貸与するなど、実習期間を全力で走り抜くためのモチベーション維持にも取り組んでいると発表されました。

第3部 事例研究2「生産性向上で日本一給料の高い旅館を目指す」(株式会社清風荘 取締役 伊藤将太 氏)
稼働率が80~90%のホテル業に対し、旅館業は55%と低く、中抜け勤務や長時間拘束、利益率4~5%といった課題があると説明。人材確保には「やりがい」だけでなく、給与や休みとのバランス設計が必要とされました。
そこで、全スタッフが旅館業務の全工程を担当する「民宿型経営」を導入。外注していた料理仕込み・洗濯・清掃を内製化して中抜けの時間帯に組み入れ、拘束時間を解消しました。あわせて、客室のシンプル化やレストランのメニュー見直しなど、おもてなしを再定義。食品ロスの削減にもつながりました。
外注費の内製化により利益が生まれ、給与・賞与に反映。新卒18人の離職率は0%になったと報告されました。

第4部 事例研究3「業態開発、事業転換の歴史と今」(株式会社HAQTSUYA 代表取締役 小川尚樹 氏)
1573年の両替商に始まり、江戸時代の酒造業、そしてコンビニへと、その時代に必要とされる生業を変えてきた大津屋の歴史を紹介。夢から逆算するのではなく、地域・顧客・取引先から声のかかる現在地から次の一手を考え、既存の資源を組み合わせて試行錯誤することで、新たなノウハウと新たな顧客に出会う循環を繰り返してきたと語られました。
老舗企業とは同じ事業を続けることではなく、変わることで役割を続けることであると強調。社員食堂やデリバリーなど、先代から続く内製化の姿勢を強みに「とりあえずやってみよう」と挑戦を重ねてきたことが、450年の事業転換のかたちであると発表されました。

受講者アンケートの結果
午前中開催となって18年目を迎えた今回、開催時期は97%、開催時間は99%、会場は99%(会場受講者)の方から「適当である」との回答を得ました。
講義内容は、各講義とも概ね7~9割の方から「大変良い」「良い」との高評価をいただきました。
一方、オンライン受講者の61%が「運営に支障があった」と回答しました。1講義目で音声が途切れて聞き取れない箇所があったことなどが要因で、今後は開催前に機器を点検して運営に臨みます。
また、今後のテーマとして「AI時代に対応するスキルや先端事例」「経営者の成功および失敗談」「事業承継の前後のリアルな経験談や課題」「中小企業診断士の伴走支援事例」などのご要望をいただきました。
いただいたご意見を参考に、今後も充実した研修となるよう改善してまいります。
