先日のドイツ訪問の中で、飛行機や地下鉄など省人化が進んだ姿が見られた。
これも日本の生産性や人の働き方、社会のルールを考える良い機会でしたので、ここで少し紹介いたします。
1.地下鉄券売機にも日本語が
今回の訪問中に、ミュンヘンで地下鉄や路面電車に乗る機会がありました。
ドイツでは、都市間をつなぐ鉄道、郊外とつなぐ地下鉄、都市内を移動する路面電車、路線バスといった公共交通が整備されていますが、これらを共通して乗車できるチケットが販売されています。
旅行者が購入するチケットの種類は、1回(最初の使用から4時間使える)、1日券(翌日の朝まで使える)、3日券(3日間使い放題)に分かれていて、さらに行動できるエリア毎に料金が分けられています。
また、日本にはない仕組みですが、5人まで同一行動だと安くなるグループ券が発売されていて、割安で購入することができます。
ちなみに、ミュンヘン市内の1日グループ券は12.5ユーロ、約1,500円と一人当たりにすれば300円で乗り放題ということです。
さらに、素晴らしいと感じたのが券売機に日本語での案内があること。
ドイツ語、英語はもちろんですが、近隣のフランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、移民の多いトルコ語に加え、日本語でチケットが買えるのは日本人観光客にはうれしいことです。
一方で、日本の鉄道でこのようなサービスがどれほどできているのかと考えると、まだまだインバウンド対応が進んでいないとも感じました。
それと、ドイツでは改札がなく、地下鉄などでは駅員を見かけることがほとんどありません。
チケットは乗車前に駅などで買い、コンコースに入る際や路面電車に乗った時に、日付印を自分で押す形の「責任乗車」となっています。
地下鉄には、たまに私服の取締官が乗車していて、チケットを買わずに乗車すると、60ユーロ、約7,000円の罰金を払うことになります。
このように守るべきルールが決まっていて、守らないと大きな罰金を科すドイツの仕組みが、サービスを見直し省人化する土壌になっているように感じました。
2.駅構内のアナウンスも最低限に
ミュンヘン中央駅の風景ですが、改札がないのは地下鉄と同じですが、更にホームに行先の掲示板があるだけで、列車の到着アナウンスも1回しかしか入りません。
また、鉄道や地下鉄に乗ると、降車の案内も早口のドイツ語で1回だけしか入りませんので、聞き逃すと大変なことになります。
日本の駅では、到着、出発のアナウンスが何度も行われ、「白線まで下がってください」など過度に注意を促す案内が溢れていますが、不必要なものも多いのではないでしょうか。
小さい頃からの教育が、このような仕組みを支えているのだと感じました。
3.チェックインも荷物預けも自動
今回はルフトハンザ航空を利用しましたが、フランクフルト空港には自動チェックイン機が並び、係員のいるカウンターは見えません。
最近、羽田空港などでも自動チェックイン機が設置され、省人化が進んでいますが、今回、フランクフルトで初めて体験したのが、自動荷物預け機。
こちらも、日本語対応のメニューがあり、搭乗券をかざすと荷物預け用のタグが印刷されて出てきて、それを荷物の持ち手に付けると自動で読み取り、そのまま先に送られていきます。
IT技術の活用が進む中、日本の空港でも同じ仕組みが導入できるはずですが、日本では間違いを犯さないためか荷物確認のためにカウンターに人が多く配置されています。
日本の出国手続きも、自動化ゲートやカメラだけのゲートが登場し省人化が進んできていますが、旅慣れた人には、自動化もスピーディーで悪くないと感じます。
このような視点で、日頃の仕事の流れを見直すと省人化できる部分が見えてくるのではないでしょうか。
削れないと思っていることがあまり付加価値を生み出していなかったり、重要だと思っていることがもっと簡便にできたりすることも、実は多いのかも知れません。
4.通勤も仕事もラフな姿で
朝、ミュンヘン中央駅のコンコースにいると、スーツ姿も見かけはしますが、ほとんどのビジネスパーソン(男女)が、ラフな姿で通勤しています。
背中にはリュックを担ぎ、スニーカー姿と、東京丸の内のニュース映像とは全く違う光景が見えます。
「営業職以外は、服装は自由」だそうで、工場の中でも、作業者は揃いのポロシャツを着ていますが、下はジーパン姿。
「仕事は洋服がするわけではない」というのが当たり前の世界で、スーツに着替える時間のムダ、そもそもスーツを買うムダ、も省いているように感じます。
日本では、周りと同じにしていれば安心とか、目立たない等どちらかというと仕事以外の理由で服装を選んでいるように思いますが、仕事に自信があれば服装はどうでもよいというのが海外の当り前なのかもしれません。
その分、仕事に集中して生産性を上げたり、IT活用で省人化してスピードアップを図るなどビジネスで求められる本質を追求しているのではないかと感じました。