協会活動紹介

アフターコロナに挑戦する中小企業の取り組みを紹介 ―2021年度地方創生シンポジウムを開催―

2021.11.22 投稿

 昭和23年11月4日に「中小企業診断制度」が発足したことに因んで、11月4日が「中小企業診断士の日」と制定されたことを記念して、福井県中企業診断士協会では、「地方創生シンポジウム」を開催していますが、今年は「アフターコロナに挑戦する中小企業経営」をテーマにした県内中小企業3社の事例紹介を行い、ウェブを含め企業経営者、金融機関、支援機関から90名が参加した。
 1社目は、「既存のお客様や従業員を守りつつ、地域経済に貢献する戦略型M&A」と題し、三福タクシー(株)(本社・小浜市)が、福井市内のタクシー事業者とのM&Aにより営業エリアの拡大や北陸新幹線の県内延伸をにらんだ着地型観光事業の推進に取り組む姿を紹介いただいた。
 三福タクシーの岩﨑一沖社長は、支援にあたった坂下泰久診断士の質問に、「事業承継型M&Aは、自社の事業拡大に向けたいくつかの選択肢の一つであり、今回は良好な関係が築けたことで話が進んだが、自社の後継者が決まっていたことも相手が安心して承継を選択できたのでは」と語った。
 2社目は、「『全国初の石臼専門工場』で孤高の存在を目指すオンリーワン戦略」と題し、創業140年の(株)カガセイフン(本社・福井市)が、福井県在来種のそばの高付加価値化を目指して、機械挽をやめて石臼専門にシフトさせていく過程と、自社が先行して取り組んできたネット販売事業についても紹介いただいた。
 カガセイフンの加賀健太郎社長は、長年支援にあたっている川嶋正己診断士の質問に対し、「県内のそば生産者を守るためにも、高価格で販売できる体制をつくる必要があり、石臼の出す香にこだわり、熟成のための超低温倉庫も導入した。今後は、全国の専門店や高級ホテル等にも販売を強化したい」と抱負を述べた。
 3社目は、「国際輸出規格への対応による輸出体制強化の取り組み~コロナ禍による国内消費減への対応~」と題し、コメ加工と卸を行う(株)幸池商店(本社・小浜市)が、コロナ禍を含め国内のコメ需要の減退の中で、輸出用の米菓の原料供給に向けて食品の国際規格「FSSC22000」を取得するとともに低温保管倉庫を導入することにより品質維持の体制を構築する取り組みについて紹介いただいた。
 幸池商店の幸池 亮社長は、支援にあたった加藤永俊診断士の質問に、「コロナ禍で飲食需要が落ち込んだことは自社にとっては厳しかったが、一方でフードロスが削減されたことはSDGsの視点からは良かったこと。大都市では後継者不足により廃業を考える米穀店が増えているので、自社も何らかの連携を取りながら美味しいお米を提供していく体制を残していきたい」と新たな課題に向けた取り組みも語った。
 今回、事例発表をいただいた3社の取り組みから、環境変化を先取りしながら、自社の強みを更に伸ばす積極的な挑戦の姿を伺うことができ、業種は異なっても活かせるヒントが多く聞かれたのではないだろうか。