診断士の視点

インドネシアの渋滞は解消できるのか

2019.03.12 投稿峠岡 伸行

 ジャカルタは「世界一の渋滞の街」といわれるくらい渋滞が名物になっていますが、東南アジア各国を訪問しても、やはり「酷い」というのが今回の実感です。
 ジャカルタ市内から約60Kmのカラワン工業団地にある日華化学を訪問した後の帰路は、雨が降ったこともあってか、夕食懇談会のホテルまで約3時間かかり、さらに懇談会終了後は、近くの独立記念塔のある公園でイスラム教のイベントがあったせいもあって、1Kmくらいの距離にある宿泊したホテルまで、1時間半かかるといった状況です。
 以前、インドネシアを訪問した際に、「舗装された道路の総延長よりも自動車の数が多いので、渋滞が起こるのは当たり前」とJETROの方から伺ったのですが、更に自動車、特に1,000CCクラスの車が増えたようで、所得の増加にインフラが追い付いていない状況が続いているようです。
 それでも、ジャカルタ市内の官庁街からオフィス街を貫くタムリン通りは、奇数日と偶数日によって通れる車のナンバーを分けるなど、渋滞緩和策を取っているが、それでもこのような車とバイクが密集する状況が見られています。
 ジャカルタ市内には、この3月に地下鉄が開通する予定で、これによってどれくらい市街地の渋滞が緩和されるかというと、現在、バイクタクシーやバスに乗っている人が地下鉄に乗り換えるだけで、自家用車に乗り慣れた人がわざわざ地下鉄を使うかというと、少し懐疑的で、当分はジャカルタの名物はそのままかもしれません。
 もう一つ、日系企業が進出する地域は、いずれもジャカルタから東に延びる高速道路沿いにあり、片側5車線ある高速道路なのですが、以前の訪問の際にも、コンテナを積んだトラックが密集して渋滞を引き起こしていました。
今回の訪問の際に、セーレンの担当者の方から「更に渋滞が激しいので早めに移動した方が良いですよ」との忠告をいただいて、余裕を持ったスケジュールに変更したのですが、それでもギリギリになってしまいました。
 実際に高速道路を走ってみると、なるほど理由がわかりました。
 現在、ジャカルタ近郊のボゴールからブカシを結ぶ高架鉄道の「LRT」を建設中で、自動運転の車両が運行を開始すると、郊外からの通勤者が自動車から乗り換えるようになり、朝晩の通勤渋滞が緩和される見込みのようです。
 一方で、工業団地に努める日本人駐在員の皆さんにとっても、渋滞で到着が読めない車通勤よりも電車で通えるようになると、ジャカルタ市内に住むことができるので、駐在員生活も大きく変わるかも知れません。
 もう一つ、渋滞を悪化させている原因が、高速道路の一部高架化を進める工事で、高架鉄道の工事と高速道路の高架工事を、片側5車線あった高速道路のうち2車線を使って建設するという、日本では考えられない方法で、現場を見て、こんなことをすれば渋滞がひどくなるのは当たり前と納得もし、他のやり方はなかったのかとも感じました。
 さすがに、地元のドライバーの皆さんは、3車線の高速を、路肩を使って4車線にして使う荒業を見せていて、観光バスでもお構いなしに、路肩をビュンビュン走り抜けていきます。
 どんどん車線を変えながら、前の空いた車線に貪欲に割り込みをしていくインドネシアですが、一方で他のアジアと違うのは、クラクションの少なさ。
インドネシア人は素直で大人しい人が多いと聞いていた割には、「運転は激しいな」と思っていたところで、割り込んでもクラクションを鳴らさない国民性は、大いに評価したいポイントです。
 あとは、ジャカルタ市内のバスについて少し触れたいと思います。
 数年前に訪問した時よりも、数段にバスがきれいになり、ノンステップバスまで見られるようになっています。
 たまたま出会った路線バスの運転者は、ヒジャブを被った若い女性で、女性の社会進出が進んでいる実感を得ました。
もちろん、東南アジア全体でも、男性はあまり働かず、女性は勤勉、というのが一般的で、インドネシアもこれに当てはまるのでしょう。
 ジャカルタの中心部には、車線の中央にバス専用レーンが設けられていて、交差点もバス専用信号があり優先されています。
 間もなくスタートする地下鉄、バス、郊外からのLRTなどの公共交通ネットワークが広がることで、ジャカルタの渋滞がどれだけ緩和できるのか、数年後にはその姿を確認してみたくなりました。

  • 中心部の朝の渋滞の模様
    中心部の朝の渋滞の模様
  • 緑のヘルメットのバイクタクシーが増加
    緑のヘルメットのバイクタクシーが増加
  • 東に延びる高架鉄道が建設中
    東に延びる高架鉄道が建設中
  • 左は高架鉄道、右は高速道路の高架工事で3車線しか使えない状況に
    左は高架鉄道、右は高速道路の高架工事で3車線しか使えない状況に
  • 路線バスの運転手は女性
    路線バスの運転手は女性